高貯蓄率で?有名校多く?振り込め詐欺被害「最悪県」の悲鳴

【関西の議論】奈良県内で振り込め詐欺被害が止まらない。同県では名門校OBの実家を狙ったオレオレ詐欺が頻発し、今年は4月の時点で、昨年1年間の被害総額を上回った。その後も架空請求詐欺などの手口が横行。1人で約4285万円をだまし取られるケースもあり、被害は28件、被害総額は1億円を超えた。このため、県は異例の「振り込め詐欺多発警報」を発令し、奈良県警も詐欺を見抜いた主婦による異例の記者会見を設定するなど次々と手を打っているのだが…。(山本考志、杉侑里香)

■初の「警報」

奈良県内では今年4月以降、名門大学への合格者を多く輩出する県立奈良高校などのOBを名乗り、家族に「女性を妊娠させてしまった」などと電話し、示談金名目などで現金をだまし取る振り込め詐欺が頻発した。

被害は卒業アルバムに電話番号などが記載されていた昭和62年~平成元年卒OBの実家に集中しており、学校側も同窓会などを通じて、被害防止のために家族に連絡を取るよう呼び掛けるなど警戒を強めている。

こうした異例の事態に、荒井正吾県知事は5月9日付で、都道府県としては初の「振り込め詐欺多発警報」を発令。現金自動預払機(ATM)を置く金融機関のほか、高齢者が集まる病院や薬局などで注意喚起していく方針を示した。

総務省統計局の平成21年の「全国消費実態調査」によると、奈良県内の2人以上の世帯の貯蓄現在高は平均約1899万円と全国で2番目に高く、荒井知事も警報発令日の会見では「奈良がターゲットにされている」と危機感を募らせていた。

■被害者の体験談

一方で県警は、自宅にかかってきた不審電話を振り込め詐欺と見抜いた詐欺未遂被害者の主婦に依頼し、県内の警察署で記者会見を開催した。主婦は報道陣の取材に対し、事件当時の心境や電話でのやりとりを詳細に語った。

主婦によると、自宅に息子を装う男から電話がかかってきたのは、くしくも県が多発警報を発令した5月9日午後。相手の男はせき込んだ声で息子を名乗り「携帯電話の番号が変わった」と伝えるなど、“一般的”な詐欺の手口を使った。

主婦は新聞などを通じてこの手口を知っていたといい、別人からの電話だと気付いた。それでも話をする内に「本当に息子なのでは」と気持ちが揺れ動き、「のどが痛ければ湿布を貼ればいいよ」と話しかけると、男は「貼っていいの」と驚いた反応を見せたという。

主婦は子供のころから息子が風邪をひいてのどを痛めると、いつも湿布を貼っていた。この家族にしか分からない思い出をきっかけに、男が息子とは別人であることを確信した。

電話の後、夫に相談して息子の自宅に電話をかけると、やはり振り込め詐欺だったことがわかり、近くの警察署に通報。それでも翌10日、再び息子を名乗る男から「女性を妊娠させてしまった」と電話があったという。

主婦の息子は有名進学校の東大寺学園高校(奈良市)OBで、現在は東京の会社に勤務。年2回ほどの帰省以外はあまり連絡をとっていなかった。

主婦は県警に、男からの電話が詐欺だとわかっていながらも、朝目覚めると「息子の体調は大丈夫なのか」とつい気にかけてしまうことを告白。会見では「離れて暮らす息子のことはいつでも心配。そちらの方に気がいってしまった」と親心をのぞかせた。

■多様化する手口

度重なる注意喚起にもかかわらず、その後も振り込め詐欺被害は続く。

6月5日には、同県天理市内の主婦(63)が、インターネットサイトの利用料名目で現金を要求される架空請求詐欺事件で、約4285万円をだまし取られた被害が明らかになった。

県警によると、4月2日午前、主婦の携帯電話に一通のメールが届いた。有料サイトに料金の滞納があり、サイトの管理会社から督促を依頼されたという内容だった。

「訴訟差し止め希望者は大至急連絡を」などと不安をあおる言葉が並んでいた。驚いた主婦が問い合わせたところ、応対した男に「別のサイトにも未払いがある」「裁判になる。供託金がかかる」などと告げられた。

主婦は夫と2人暮らしだが、「自分で解決しよう」と決意。その後も半ば脅しのように要求は続き、誰にも相談することができず、翌3日~5月22日、奈良、天理両市内の郵便局から15回、計約4285万円を現金書留で送金した。

現金書留の封筒には50万円までしか入らないため、主婦は89袋もの封筒に現金を分けて送金したという。

16回目に約250万円を送金しようとしたところで、ようやく局員が異常を察知。主婦から事情を聴いて送金先を調べた結果、架空請求詐欺事件に多用される虚偽の会社名と判明した。

県内では他にも金融機関からの振り込みではなく、郵便局から現金書留やゆうパックで送金させる手口も増加している。

県警の担当者は「警戒を強める金融機関を避け、郵便局から送金させる手口に移行しているのではないか」と分析する。

■被害防止のためには

今年に入って県内では県警が把握する限りで200件以上の不審電話があり、未通報分を含めると、件数はさらに膨れあがる見込みだ。

県警は被害防止の啓発活動に役立てようと、詐欺被害者に振り込め詐欺についての意識調査を実施している。調査では「被害に遭わない自信はあったか」との問いに、程度の差こそあれ、回答者25人の内「あった」と答えた被害者は21人だったのに対し、「なかった」は4人だった。

一方で、オレオレ詐欺の被害者は「手口は知っていたか」との質問に、回答者18人中、15人が「知らなかった」と答えており、被害に遭わない自信はあるものの、犯行手口が周知されていない実態が浮き彫りになった。

県警はこのため、毎月15日を振り込め詐欺の「被害発生ゼロ日」とし、年金支給日の6月15日には県内15警察署の署員と自主防犯団体のメンバー計約570人を動員して金融機関での警戒や街頭での啓発チラシの配布などを実施。在宅時でも留守番電話機能を設定し、家族からの電話には正しい番号でかけ直すなどの被害防止策を呼び掛けている。

県警の担当者は「犯罪者はあの手この手を使って被害者の弱みにつけ込み、財産を根こそぎ奪いにくる」とし、「被害を未然に防ぐためには、家族や知人同士の絆が重要。普段からいつでも相談できるよう、互いに声を掛け合ってほしい」と訴えている。

 

産経新聞 7月1日(日)7時00分 元の記事

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