「だまされていない!」詐欺被害の家族、説得は逆効果?7000万円失った70代男性 悩む妻

「70代の夫が怪しいサイトにはまっている。何とかならないでしょうか」。西日本新聞の特命取材班に半ば相談のようなファクスが届いた。慈善事業家を名乗る人物から「8千万円を支援したい」と持ち掛けられ、その手続きのために次々に現金をポイントに換えているという。明らかに詐欺に思えるが、家族の説得にも耳を貸さないとか。本人に話を聞いてみると-。

 「絶対にだまされていない!」。70代の男性は言い張った。

 昨春、携帯に突然、資産家を名乗る女から「8千万円譲渡」「無償の愛」などと記されたメールが届いた。必要な手続きをすれば受け取れると説明され、指示通りにインターネット上のサイトに登録したという。

■携帯メールを「誰の言葉よりもこれを信じる」
 やりとりにはポイントが必要で、コンビニで電子マネーを購入。IDを運営者側に伝えると、サイト内でポイントが加算された。「必要な手続き」と言われてメールのやりとりを重ね、ポイントを消費する「バトル」も繰り返してきたが、まだ1円も手にしていない。逆に「電子マネーに数十万円は使った」。

 ネット上には、このサイトにだまされたという声がいくつもある。警察からは「課金詐欺」と言われているが、男性は頑として聞かない。「5月8日に『私の支援は本物です』というメールが来とる。誰の言葉よりもこれを信じる」と携帯の画面を見せた。

■1年数カ月の間に計7千万円以上失う
 1週間後、男性の妻から気落ちした声で電話があった。このサイトにつぎ込んだ額は約400万円に達していたほか、別に三つのサイトにも登録しており、通帳を調べると、1年数カ月の間に計7千万円以上を失っていたという。

 初めてだまされたサイトも「3億円支援します」というメールがきっかけ。支援を受けるために現金を振り込むように指示されたという。最初は3千円。要求額は数十万円、数百万円と桁が増えた。大金を受け取れるならという軽い気持ちから登録し、徐々に引き返せなくなったのか。

■詐欺被害に遭う人「動揺させられ、時間的に切迫した状況に置かれる」
 神戸学院大の秋山学教授(社会心理学)によると、詐欺被害に遭う人は共通して「動揺させられ、時間的に切迫した状況に置かれる」という。男性も「○時までに振り込まないとこれまでの手続きが無駄になる」と入金をせかされていた。

 人には日常が常に安全だと考える「正常性バイアス」や、いったん思い込みに支配されると都合の良い情報を集めて信じ込む「確証バイアス」があるとされる。だまされるわけがないと思っている人に限って対処できず、詐欺師の言葉を信じ込むのはこのためだ。

 家族の言葉に耳を貸さないことについては、「『お金を取り戻して見返してやりたい』という心理に陥っているのでは」とみる。

■警察を呼ばれて説得されたことも
 実は銀行で何度も「詐欺では」と引き止められ、警察を呼ばれて説得されたこともある。最近、家族に病院に連れて行かれ、軽度の認知症と診断された。

 認知症には金銭への執着のほか、不利なことは認めないといった症状がある。脳科学に詳しい山元大輔・情報通信研究機構上席研究員によると、周囲の説得や否定は「妨害」とみなされて逆効果になるという。「本人が心地よさを感じる出来事や記憶を喚起し、とらわれている事から意識を離してあげることが大切だ」

■ショックを隠せない妻
 老後の蓄えをほぼ失い、妻はショックを隠せない。「現実を受け止めきれず、つい責めてしまうこともある。夫も相当傷ついているはずなのでよくないとは思うけど…」

 警察庁によると、こうした詐欺の被害者は70歳以上が6割超を占める。もし、自分の家族がだまされたら、どのような言葉を掛けてあげられるだろうか。

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西日本新聞 7/17(火) 10:07配信 元の記事

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